二子山部屋チャンネルに学ぶ、ファンの作り方
いつの間にか大きく育ったチャンネル
相撲の元大関雅山が親方の二子山部屋が、2023年にYouTubeチャンネルを始めました。現在(2024.5時点)では登録者数25万人の人気チャンネルになっています。
ここでは、なぜ1年間でこんなに大きく育ったのか、その理由とともに、アーティストの発信の参考になる部分について掘り下げていきたいと思います。
本番までの過程を見せる
昭和時代はSNSがなく、この「過程を見せる」というのはテレビ報道や雑誌、新聞に依存していました。そこから時代は大きく変わり、現在はSNSで過程を見せることが可能になりましたね。
実は、私たちが何か発信をしようと思った時に
- 今度こんなイベントやります!
- こういう賞を取りました!
- ここでグループ展に出します、見にきてね!
のような「大きなこと」「決まったこと」を書きたくなるのですが、実はそれはおまけのようなものなのです。
この二子山部屋のチャンネルでは、日々の稽古や食生活、日常を見せることで、部屋に入ったばかりの新弟子時代からだんだん強くなっていく過程を知ることができます。そうすると「現在強い横綱もこうやって上に上がって行ったのだな」と想像ができ、新弟子を応援する楽しみができるんです🎵
チャンネルをウォッチしていると、力士には交代で食事を作る「ちゃんこ番」というのがありますが、それに関してもビフォーアフターが目に見えるというのが面白いです。
- 入門当初は全く料理ができなかったのに、見違えるほど料理が上手になっていく過程
- 入門当初は体が細かったのに、稽古や食によってどんどん大きく強くなっていく過程などなど。
芸事をしていると、つい完成した姿を見せなくてはと思いがちではないですか?でも見る方としてはその過程も知ることでより応援したくなったりその人の弱さや努力している姿を「私だけが知っている感覚」になったりするんですよね。
ぜひ制作過程、練習風景、創作場所、普段考えていること、交友関係などなど、あなたも過程を発信してみてください。
視聴者の疑問質問に答える
二子山部屋チャンネルでは坂上(さかうえ)さんという動画編集者がお仕事をされています。その坂上さんが、チャンネルのコメント欄に入ってくる質問を力士にして、うまく答えを引き出しているんですね。
例えば相撲用語や、動作の意味、しきたり、後援会と力士の関係、部屋の経営について、食事内容、巡業について、普段の過ごし方、好きなものなどなど。
チャンネルを見ている一般人が、普通に疑問に思っているようなことを聞いてくれる。力士はその生活が当たり前なので、最初は簡単にしか答えてくれないんですが、坂上さんが掘り下げることでずっと深くまで知ることができるんです。
これは、アーティストも同じだなと思います。
油絵って扱い大変そう、刺繍作るのに何時間かかるんですか?、作品を汚したら洗えるの?、歌手って喉のケアをどうやっているの?イベント制作の裏側は?などなど…
目や耳に入ってくる、今まで聞き流していた質問疑問。それらに答えていくことで、視聴者とのコミュニケーションが深まっていきますよね。
部屋の普段の空気感を伝える
このチャンネルの魅力の1つに、普段の空気感を感じられることがあります。
相撲部屋というと、親方との厳しい関係だったり、修行要素の強いヒリヒリした感覚を想像するかと思うんですが、意外に親方や女将さんと弟子の関係が家庭的で、そこが良いなぁ、というファンが多いんです。
「15歳くらいで息子を相撲部屋に預けた親御さんが、このチャンネルを見て安心するでしょうね」というコメントも多いです。まるで自分の息子を見るような目で見ているから、本場所に入っても応援に力が入るんです。
キャラ立て
二子山部屋の親方と女将さんは、実は無類の猫好き。保護猫のテレビ番組にも出演され、実際にお部屋で猫を飼っておられます。
相撲部屋の親方が、猫を目の前に可愛い声で猫の名を呼ぶなんて❤️そのギャップが凄いんですが、そこがいいんです、笑。また普段可愛らしい女将さんが、実は強くてしっかりしていながら、でもほんわかしているところ。力士それぞれが、お互いにリスペクトしながら愛をベースにした関係を作っているところ。
それぞれのキャラが立っているのがまた、見ていて面白い。部屋に密着している編集者だからこそ知ることができる、普段の貴重なカットを盛り込んでいます。
あなたもあなたのキャラを全面に出してみてはどうでしょうか?普段伝えてこなかったこと、作品からはわからないことを知ることで、作家のファンになる人が増えるかもしれません。
まとめ
ここまで二子山部屋のYouTubeチャンネルを分析してきましたが、このチャンネルが本場所の取り組みだけ伝えるなら、ここまでファン化しなかったと思います。
一言で言うならファン化のコツは「日々の過程を伝えること」
もちろん作品や演奏、本番でこそ価値が決まるというのは相撲も同じ。いくらチャンネル内で人気があっても、大相撲の本場所で実力を発揮できなければ逆効果です。
アーティストも作品や演奏でこそ、本来の力を見せることができるわけですし、そこに価値があるのは確かです。
しかし、それだけではなく、人柄や制作過程、見ている人とのコミュニケーションをとっていくことで、相乗効果でファン化が進んでいくということを、改めて確認できました。SNSなどで、日々発信をしていきましょう。