サウンドスケープ
サウンドスケープ、という言葉をご存知でしょうか。
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私はかつて、旧東ベルリンだった場所へ旅したことがありました。駅名は忘れましたが、そのある駅で、私は発車時刻を知らせるベルはおろか、駅員の放送さえも入らないのに驚きました。それでも電車の扉は閉まり、だれも挟まれませんでした。(もちろん空いていたから、かもしれませんが。)こどもが電車に乗って来ても小さな声でお話していました。
私はただただ、その静かな感じに驚いたものです。
翻って日本は、駅だけをとってみても過剰サービスの車内放送、いろんな発車ベル、車内で大声で話す人、喋るエスカレーター...。
街中のことではないですが、ヨーロッパはコンサート文化が根付き、静かに聴くものだという伝統的な感覚があるのに比べ、日本では落語の最中にお菓子やお弁当を食べても良いようなゆるい良さがあるので、もともと公共での感覚が違うのかもしれないけれど...。
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そんなことに思いを巡らしていくうち、私の頃にはなかった、音に意識をおいて耳を開く授業が学校にあってもいいよね、と思ったのです。そうしたらこども達が何か気が付いて、音環境を変えていく芽が生えるかもしれない、と。(もちろんその前に、大人である私達が声を上げて社会を変えていくことは必要だと思います。)
今年始めた「音遊びの会」でも、最初にみんなで目をつむって、周りの音を聴きます。その時、こども達は身体ごと集中していて、正に耳を開いているな、という印象です。全身で聴こうとしている姿がめっちゃ可愛いです^^。
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ランドスケープならぬ、サウンドスケープ。
これはカナダの作曲家マリー・シェーファーが提唱した考えで、「音の環境」と言い換えられます。
彼は著書『サウンド・エデュケーション』の中で、世の中の騒音がひどくなっている昨今「私たちはどの音を残したいのか?〜そして最終的にめざすのは、周囲のサウンドスケープに影響をあたえるようなことについては、私たち皆が、意識的なデザイン決定をし始めるということだろう。」と書いています。そしてそのようなことを人に適切に伝えるために「耳掃除の課題集」と著者が呼んでいるこの著書が書かれています。この本には聴覚を開く実に興味深い100の課題が載っています。
これは大人向けの課題集で、次に日本のこども達のために書かれたのが「音さがしの本」です。これはマリー・シェーファーと日本の音楽教育家今田匡彦さんとの共著になっていて、俳句なども出て来ます。
今回の短大講義では、ある一日を使って、このマリー・シェーファーが作ったサウンドスケープの課題を、将来保育者になる短大生と一緒に行います。彼らの中で何かしら起きるであろう変化が、小さなこども達に何か影響を及ぼすことも、いつかあるかもしれません。そんなことをちょっと期待しています。